Si(111)-(7×7)清浄表面の作り方

これは書くまでもありませんが、研究室に配属されたばかりの学生用として書いておきます。

大まかな流れ

  1. 試料の脱ガス
  2. フラッシング
  3. アニール

以下は、Si(111)-(7×7)清浄表面を得るための主要な工程です。この表面は比較的簡単にでき、温度の調整はあまり厳しくありません。なので、実験する人によって条件が結構ことなります(それに関しても今後追記・変更してきます)。


1. 試料の脱ガス

目的:
Si試料表面に付着している水分や炭化水素、その他の吸着分子(=ガス分子)、さらには内部(バルク)の不純物を除去し、クリーンな状態にすることです。これにより、後の高温工程での不純物による影響を防ぎます。

工程の流れ:
1. 真空環境の準備: 作成するチャンバーの真空度を1×10-8 Pa以下にする。
2. 試料への加熱: 上記の真空度を維持したまま、試料を約500℃以上程度までゆっくり加熱。最初は300℃くらいからはじめて、真空度が10-8 Pa代を保ちながら、少しずつ温度を上げる。
3. 脱ガス: 約500℃での脱ガスを数時間にわたって行う。試料全体(および試料ホルダ)から均一にガスを抜き取るのがポイント。

ポイント:
– 真空状態を維持することが非常に重要。
– 急激な温度変動がないよう注意


2. フラッシング

目的:
短時間で非常に高温にすることで、試料表面に残っている酸化物や他の不純物を一気に除去する。

工程の流れ:
1. 急激な加熱: 試料を脱ガスしている状態(試料温度約500℃)から約1200℃程度まで上昇させる。
2. 約1200℃を約5秒間保持する。表面に存在する酸化膜やその他の汚染物質が瞬時に蒸発または分解される。
3. 1と2を繰り返し行う。真空チャンバーにいれたばかりの新しい試料ならば、必要な回数は多い。すでに7×7表面を作っている試料ならば1回だけで行ける場合もある。

ポイント:
– 温度を上げすぎると試料が溶けたり割れたりする。
– 高温をキープする時間が長くなると真空度が悪化するおそれがある。
– 常に真空度をモニタしながら行うことが重要


3. アニール

目的:
フラッシング後、試料表面のシリコン原子が秩序だった状態に再配置(再構成)され、安定な(7×7)パターンを形成する。

工程の流れ:
1. 融点付近での試料温度の保持:試料を約900℃に保つ。Si表面が溶けている状態と思われる
2. 冷却による再構成表面の形成: 少しずつ温度を下げていく。870℃付近で試料表面が固まり7×7構造が形成される。